【fig】という単語は、13世紀初頭に初めて英語で使用され、、古フランス語の「figue」、古プロヴァンス語の「figa」から来ていて、バルカンラテン語の「*fica」に対応し、ラテン語の「ficus」やギリシャ語の「sykon」、古英語の「fic」に由来します。イタリア語には、ラテン語のficusから直接派生したficoがあります。
イチジク属(学名:Ficus)は、クワ科に含まれる属で、イチジク属植物は、イチジク、ガジュマル、ゴムの木など、世界中に約800種以上の種類があります。
果物として食べられているイチジク【Ficus carica】は、花と結実に関する習性によって、Common Type (普通種) ・San Pedro Type(サンペドロ種)・Smyrna Type (スミルナ種)・Caprifig Type(カプリ種)の基本的な4つのタイプ分類されます。
食用になるイチジクは雌花を持つ、Common Type (普通種) ・San Pedro Type(サンペドロ種)・Smyrna Type (スミルナ種)の3種類で、Caprifig Type(カプリ種)は、雄花と雌花の両方を持ち、果実を成熟させるために受粉が必要なタイプですが、果実は小さく硬く食用には適しません。
Common Type (普通種) (Bifera typeとUnifera type)
学名:Ficus carica LINN.var.hortensis SHINN
Bifera type:夏秋兼用品種:夏果(breba)と秋果(main)が収穫出来る品種
Unifera type:年に1回だけ秋果(main)をつけるタイプ
雌雄同体の花を咲かせるので、夏果秋果ともに受粉がなくても果実が実るため、栽培が容易なので、このタイプに属する品種はきわめて多く、わが国で栽培されている最も普通のイチジクで、夏秋果兼用種や秋果専用種はすべてこれに属します。また、果実 が大きく甘味が強いことから、食用として人気があります。
Bifera type:【桝井ドーフィン,蓬莱柿,ビオレソリエス,ブラウン ターキー,ミッション,ホワイト イスキア,カドタ,オスボーン プロリフィックなど多くの品種】
Unifera type:Coll de Damaシリーズ, Calderona, Martinenca, Panache, Verdal,White Genoa(ホワイトゼノア)等
San Pedro Type(サンペドロ種)
学名:Ficus carica LINN.var.intermedia SHINN
夏果は普通種と同じで受粉なしで結実、秋果はスミルナ種と同様に結実にはカプリ種の受粉を必要とする品種です。結実の習性は夏果は普通種とスミルナ種の中間になります。
【コナドリア、キング、サンペドロホワイト、ビオレ ドーフィンなど少数】
海外の品種
【Colombro,FilaccianoBianco,Gentile,Grantham’sRoyal,KalaHeera,Khdari,Lampeira Preta,Mykonos Black,Nazarti,Norman’s Yellow,San Giovanni,San Miro Piro,Sao Joao Preto,Vlassoff,Zumwaltなど少数】
雄花をもたず,第1期果は普通種と同じく受粉しないと単為結果するが,第2期果はス
ミルナ種と同様に結実にはカプリ種の受粉を必要とする品種群である。すなわち,結実
の習性は普通種とスミルナ種の中間にあたる。わが国で栽培されている夏果専用種のサ
ンペドロ ホワイトやビオレー ドーフィンなどがこれに属する。
Smyrna Type (スミルナ種)
学名:Ficus carica LINN.var.Smyrnica SHINN
スミルナ種はイチジクコバチ(Blastophagas) という昆虫によって、カプリ種の雄花から受粉されることによってのみ、その果実を成熟させるイチジクとしてよく知られている。そのためイチジクコバチ(Blastophagas) が生息できない日本では、栽培されていません。
スミルナ地方で古くから栽培され、今日ドライイチジクとして広く栽培されています。第2期果が主要な果実で,種子が多くでき,この種子には油脂が含まれているから,乾果にすると特有の香味があり,品質は最もすぐれている。最近では植物ホルモン剤の使用によって単為結果も可能になっている。
最近では、トルコ、イラン、アフガニスタンなどの中東諸国以外で、アメリカでも栽培されるようになっています。因みに、アメリカでは1880年に G.P.Rixford によって、カリフォルニアに初めてスミルナ種のイチジクが導入され、その後、1889年にイチジクコバチを産するカプリ種のイチジクが導入されて、スミルナ種のイチジク栽培が始まったと言う。
海外の品種‐詳しくは、Smyrna Type (スミルナ種)とFig Wasp(イチジクコバチ)とCaprification(カプリ化)のページ参照
【A Sangue,Abate,Aboucherchaou,Bardacik,Black Bursa,Bursa Siyahi,Cara Lisa,DFIC 0023,Fico Pesca D’ Oro,Gara Goklop,Injir,Green Kalamata,Inchario Preto,Karayaprak,Kimi Sika,Marabout,Marabout C. Markopoulou,Smyrnay,Meteorito,Ohra Tabahanosika,Purple Smyrna,Sari Lop,Sarizeybek,Snowden,Stanford,Sultani (Aaron),Sultani (Green),Tiberio,Unk Pastiliere,Vasilika Melisi,Violette d’ ArgenteuilYediver,Zidiなど】
Caprifig Type(カプリ種)
学名:Ficus carica LINN.var.sylvestris SHINN
小アジアおよびアラビア地方の野生種で、栽培品種の祖先とみなされている、雌のイチジクを受粉させるのに必要な花粉を持つ雄のイチジクです。イチジクコバチ(Blastophaga
grossorum)が生息し、成虫になり運んだ花粉によって、スミルナ種の受精、結実が達成されるが、この現象を“カプリフィケーション(Caprification)”と呼んでいます。果実はこの昆虫がいることと雄花が多いことのために食用には向かないです。
Persistent caprifigとNon Persistent caprifig
Caprifigには、Persistent caprifigとNon Persistent caprifigがあります。
Persistent caprifigは、共通のイチジクタイプの子孫を生み出す可能性がある貴重な遺伝的性質を持っています。詳しくはこちら!(Wilson’s Point Reyes Grandi Caprifig、)
※Persistent caprifigは、P (永続的) 遺伝子を継承するものです。非持続性カプリフィグによって受粉された雌のイチジクは実生を生み出すことができますが、P 遺伝子を持つものはありません。永続的なカプリフィグからの花粉で受粉したメスのイチジクはどれも、P 遺伝子を持つ種子を生産できます。
わかりやすく説明すると、LSU育種プログラムで開発されたイチジクのように、受粉させて新種のCommon Type (普通種)を開発するにはPersistent caprifigが必要で、ただ受粉させて果実を収穫するだけであれば、Non Persistent caprifigで大丈夫だと言うことです。
3種の果実
カリフォルニアでは、 4月初旬に成熟する最初の果実または冬果実の“Mamme”、2番目または春の果実で6月に成熟する“Profichi”、そして 夏の終わりに成熟する3番目の果実であるMammoniの3種の果実が知られています。
これらの名前と作物に関する詳細は、Eisen (1896、1901)、Rixford (1918a)、および Condit (1920a) などの多数の出版物で見つけることができます。
Persistent caprifigの品種
【Capri No.1,C1,Carlie’s Caprifig,Croisic,DFIC6,DFIC8,DFIC10,DFIC126,DFIC127,DFIC134(Stanford),DFIC188,D3-9,D3-11,D13-39,D13-54,Excelsior,L55-13-39,Maslin No.150,Milco,Roeding 1,Roeding 2,Roeding 3,Roeding 4,Wild #1,Duccar abjad,Duccar atimar】
イチジクの来歴・生産量
イチジク(Ficus carica )
イチジク(Ficus carica )は、バラ(Rosales)目クワ科 (Moraceae) のイチジク属として分類される低木落葉果樹です。クワ科の種の半数以上がイチジク属に属していますが、イチジクはそのイチジク属の中で主要な種の一つです。
イチジクは西アジアにおける伝統的な果樹であり、原産は南アラビア、あるいは野生イチジクが植生するトルコやイランを含む地中海沿岸部と推定されている近年の研究では、ヨルダン渓谷に位置する約 11,400 年前の遺跡から単為結果性を有する種の実が発見されたことから、イチジクが世界最古の栽培植物であることが示唆されています。
日本のイチジクの歴史
日本への導入については、原産地から東進し中国を経て渡来したとする説と、江戸時代初期の寛永年間にポルトガル人によって長崎に伝えられたとする説があります。最初に導入されたイチジクは‘蓬莱柿’(ホウライシ)で、“‘日本種”とも呼ばれています。
1868 年(明治元年)には洋種イチジク 4 種が導入された記録がありますが、日本のイチジク栽培が本格的に普及したのは,広島県の桝井光次郎氏がアメリカ, カリフォルニアから‘桝井ドーフ
ィン’を持ち帰った 1908年(明治41年)以降で終戦後‘桝井ドーフィン’の栽培面積は徐々に拡大し、昭和 50 年代には国内シェアの 80%以上を占めるに至っています。
その後,近年まで‘桝井ドーフィン’と‘蓬莱柿’のみが主な経済品種であり、愛知、和歌山、大阪、兵庫、広島、福岡を中心とした西日本の暖地で栽培されてきました。
これら2つの品種は果実が大きく多収であるが、糖度が低く肉質が粗いなど品質面に欠点が多くみうけられ、他の海外からの導入品種も収量性や品質面に問題があり、経済栽培には至っていないのが現状です。
しかしわずかですが、2000年頃から佐渡の小木地区で栽培が行われはじめた、フランス原産の黒いイチジクで、栽培が非常に難しく収穫量が少ないことから“黒いダイヤ”とも呼ばれる“ビオレ・ソリエス”が、話題を集め各地で広がりを見せています。
近代以前イチジクの育種は,自然実生や自生実生の中からの選抜育種が中心であったようですが、20世紀以降主にアメリカの研究者らによって人工授粉を用いた交雑育種が行われるよう
になってきました。
当時の指導者であった Condit(1883-1981)は 300 以上の交配を行い,総計 30,000 以上の実生を作出しており、これらの中から経済品種‘コナドリア’が育成されています。
また、日本では福岡県農業総合試験場で、2000 年に“姫蓬莱”(実が小さいので普及に及ばなかった品種)、2004年にで「桝井ドーフィン」や「蓬莱柿」と比較して、肉質が緻密で果汁が多く、高糖度であるのが特長の“とよみつひめ”が誕生し、その後栽培面積を大きく拡大させ市場を広げています。
イチジクの生産量
国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2021年の世界の年間イチジク生産量は約112万1,000トンで、ドライイチジク生産量は約105万トンと推測されています。
世界のイチジクの生産量トップ10はの順トルコ、エジプト、モロッコ、アルジェリア、イラン、スペイン、シリア、ウズベキスタン、アメリカ、アルバニアとなります(FAO統計2021年分)。生産量トップ3の国で世界の生産量の52%を、トップ5の国で70%、トップ10の国で世界全体の84%を生産しています。そのうちトルコの生産量は約30万トンで1位となり、世界のイチジク生産量の約30%を占めています。
オレゴンチェリーグロワーズ(OCG)の2020年の統計によれば、日本では和歌山、愛知、兵庫、大阪、福岡のトップ5で全生産量(約11,000t)の約7割にあたる7,400tが生産されています。これは、世界全体の約1%になります。
イチジクの生産量は、近年増加傾向にあります。 これは、イチジクの健康上の利点に対する認識の高まりや、ドライイチジクの需要増加などが要因と考えられます。
ドライイチジク
イチジクは、食物繊維やカリウム、ビタミン C などが豊富な果物です。 また、抗酸化物質も豊富に含まれており、健康維持に役立つと言われています。
その中で、ドライイチジクは水分が抜けているため、100gあたりでみると生いちじくよりも数値が大きくなるのは当り前なのですが、注目すべきは食物繊維とミネラル(鉄・カリウム・カルシウム)の数値です。いちじく1個あたりに換算しても、ドライイチジクのほうが約1.5~2倍多く含まれ、ギュッと凝縮されていることがわかります。
また、水分量が少なく、保存期間も長く、エネルギー量も高く、携帯性に優れていることから、スポーツ選手や登山家などの間でも人気があります。
ドライイチジクは、トルコ西部に位置するメンデレス盆地の気候と生育条件に適しています。この地域の温暖で乾燥した夏と、温暖で雨の多い冬は、イチジクの木が成長し、高品質の果実を生産するのに理想的な環境を提供しています。“Sarilop(サリロップ)種”は、この地域で栽培されるイチジクの中でも最も人気のある品種のひとつで、甘くジューシーな果肉と薄い皮で知られています。
トルコ、イラン、アフガニスタンといった中東諸国は、ドライイチジクのトップ生産国のひとつです。トルコが最大の生産国で、世界のドライイチジク生産量の約70%を占め、次いでイランが約15%を占めています。これらの国の気候はイチジクの栽培に適しており、イチジクの栽培と輸出には長い歴史があります。
世界のドライイチジク生産量の15~20%近くが生産国で消費され、生産国の国内消費の残りの一部が輸出されます。イチジクは、その特殊な栽培条件のため、世界でも限られた国でしか生産されていません。暖かく乾燥した気候で生育し、受粉には特定の種類のスズメバチを必要とします。
イチジクの主要生産国はトルコで、エジプト、イラン、モロッコ、アルジェリア、イラン、シリア、米国、スペインがこれに続く。2021年、トルコの生産量は約30万トンで1位となり、世界のウェット・イチジク生産量の約30%を占めました。2021年の世界の年間イチジク生産量は約112万1,000トンで、ドライイチジク生産量は約105万トンでイチジク生産量の4分の1を占めています。
全米農業統計局によると、米国はイチジクの輸入国であると同時に輸出国でもあります。米国ではイチジクを生産しているが、ドライイチジクの需要があるため、米国で生産されるイチジクの80%以上は加工産業に出荷されます。ドライイチジクは保存期間が長く、焼き菓子、スナック菓子、朝食用シリアルなど、さまざまな製品に利用できるからです。その結果、イチジクの加工産業への利用が増加し、予測期間中にイチジクの需要が加速する可能性が高いです。
栄養
生のイチジクは 79% が水分、19% が炭水化物、1% がタンパク質であり、脂肪はほとんど含まれません。それらは中程度の食物繊維源( 1日の摂取量、DVの14%)と100グラム当たり310キロジュール(74kcal)の食物エネルギーであり、重要な含有量の必須微量栄養素は供給しません。
水分が 30% になるまで乾燥すると、イチジクの炭水化物含有量は 64%、タンパク質含有量は 3%、脂肪含有量は 1% になります。100 グラムで 1,041 kJ (249 kcal) の食物エネルギーを提供するドライイチジクは、食物繊維と必須ミネラルの マンガン( 26% DV) が豊富な供給源 (DV 20% 以上) 、カルシウムを豊富に含んでいます。、鉄、マグネシウム、カリウム、ビタミンKが適度に含まれています。
繁殖
イチジクには他のどの樹木作物よりも多くの自然発生品種が含まれていますが、正式な育種プログラムは 20 世紀初頭まで開発されませんでした。「イチジクの大祭司」Ira Condit(アイラ コンディット)とWilliam Storey(ウィリアム ストーリー)は、カリフォルニア大学リバーサイド校を拠点として、20世紀初頭に数千本のイチジクの苗木をテストした。その後、カリフォルニア大学デイビス校でも研究が続けられた。しかし、イチジク育種プログラムは最終的に1980年代に終了しました。
しかし、乾燥イチジクと生イチジクの両方で昆虫や菌による病気の広がりがあったため、1989 年にJames Doyle(ジェームズ ドイル)とLouise Ferguson(ルイーズ ファーガソン)によって、Ira ConditとWilliam Storeyによってカリフォルニア大学リバーサイド校で確立された遺伝資源を使用して育種プログラムが復活し、交配が行われ、カリフォルニアでは現在、公開品種「Sierra」と特許品種「sequoia」の 2 つの新品種が生産されています。