キング(ザ キング)

キング(Desert King)

シノニム: Desert King,King(DFIC 85),Charlie,White King
夏果専用(サンペドロ種)
果実の大きさ:40~200gぐらい(糖度18%)
果皮:黄緑
果肉:ピンク~鮮やかな赤
肉質:蜜
耐寒性ゾーン:7A~(-17.7~-15.0度以南)(北海道南部~)
原産国:アメリカ

桝井治氏がアメリカから導入した、夏果専用品種でアメリカでは”Desert King”とも呼ばれています。

導入当初は、夏果専用種で収量が少ないこともあり、あまり普及してこなかった品種ですが、一文字整枝法で栽培することにより儲かる「ザ・キング」が誕生した。

糖度も高い上、甘いだけではなく酸味もある、アイスクリームのような品種です。

  • 果実は、40~200gぐらい(糖度18%)と非常に大きく、果皮は黄緑色で、果肉はピンク~鮮やかな赤です。
  • 味は、舌触りが滑らかで、酸味を持った超甘でとても美味しい品種です。
  • 耐寒性:強 耐寒性ゾーン:7A~(-17.7~-15.0度以南)(北海道南部~)
  • 豊産性で、高品質な6月下旬~7月中旬収穫の夏果専用イチジクです。

学名:Ficus carica LINN.var.intermedia SHINN

夏果は普通種と同じで受粉なしで結実、秋果はスミルナ種と同様に結実にはカプリ種の受粉を必要とする品種です。結実の習性は夏果は普通種とスミルナ種の中間になります。

【コナドリア、キング、サンペドロホワイト、ビオレ ドーフィンなど少数】
海外の品種
【Colombro,FilaccianoBianco,Gentile,Grantham’sRoyal,KalaHeera,Khdari,Lampeira Preta,Mykonos Black,Nazarti,Norman’s Yellow,San Giovanni,San Miro Piro,Sao Joao Preto,Vlassoff,Zumwaltなど少数】

雄花をもたず,第1期果は普通種と同じく受粉しないと単為結果するが,第2期果はスミルナ種と同様に結実にはカプリ種の受粉を必要とする品種群である。すなわち,結実の習性は普通種とスミルナ種の中間にあたる

Common Type (普通種)には、 (Bifera typeとUnifera type)があります!

Bifera type:夏秋兼用品種:夏果(breba)と秋果(main)が収穫出来る品種
※桝井ドーフィン,蓬莱柿,ビオレソリエス,カドタなど多くの品種!
Unifera type:年に1回だけ秋果(main)をつけるタイプ
※Coll de Damaシリーズ, Calderona, Martinenca, Panache, Verdal,White Genoa(ホワイトゼノア)等

キングは、San Pedro Type(サンペドロ種)でイチジクコバチの生息域で、受粉できれば秋果も付けることができますが、Common Type (普通種) のUnifera typeのイチジクは、受粉に関係なく年に1回だけ秋果を付けるタイプです!

【植え付け・仕立て】

  • 一般的には、一文字整枝または開心自然形が良いとされますが、夏果専用品種は、着果が少ないうえに生理落下が多いため収量が少なく経済栽培はできないとされてきましたが、キングは開心自然形でもそれなりの収量が上がり、通常はあまり向かない一文字整枝にすることによってさらなる収量アップが確認できた事例があります。
  • 1年目は収穫は考えず、土台となる樹の骨格を作ることを目的とします。
  • 植え付け時に苗木を高さ50cm程度のところで切り戻し、そこから発生する新梢を自分の作りたい樹姿に必要な数だけ発生させます。その年の落葉後に、伸ばした各枝をさらに30cm程度の長さで切り戻して、結実準備が完了です。

【土壌・肥料・水やり】

  • 日当たりの良い、水はけの良い用土に植え、特に植えてから最初の1年は、定期的に木に水を与えてください。通常定植2年目くらいから実をつけ始めます。
  • 発芽期の3~4月、特に乾燥する7~8月、9月上中旬は、土の乾き具合を見て5日に1回程度は水やりすると枝が良く伸び、実が甘くなります。
    (※鉢植えでは、4~10月は1日1回、ただし夏には2回行う。冬は7~10日に1回行う。)
  • イチジクはあまり土を選ばないと言いますが、一般的に有機物が豊富で、わずかにアルカリ性で排水と通気の良い土壌が理想的です。
  • 酸性土壌を嫌うのでPH7.0を目標に、冬に苦土石灰などをまいてで調整します。
  • 肥料は5月はじめ【N/P/K=13/10/13の肥料(1~3年150g・ 4~6年450g )】と12月~1月に、有機配合肥料と苦土石灰を1㎡当たり150g施します。
    (※鉢植えでは、植え付け1年目は5~10月まで1~2個。または緩効性化成肥料10~20gを2回。2年目以降は冬に油かすを50g、4~10月には毎月、化成肥料を5g程度施す。)
  • 果実は1枝に8~10個が適当です・実がたくさん付きすぎると栄養不足で成長しないので、早めに摘果します。

【害虫・病気・防寒対策】

  • 必ずカミキリムシ(テッポウムシ)予防のために、カットサイドSまたは予防フィルムを、幹に塗るか、見つけ次第捕殺してください。
  • 幼虫は幹に入りおがくずのような糞を外に出すので枝を切り落とすか穴に【スミチオン1000培液】または、【住友化学園芸 殺虫剤 園芸用キンチョールE カミキリムシ 幼虫 退治】などを注入して退治します。
  • 日当たりと風通しをよくして、害虫や病気(さび病など)から木を守ります。
  • 木の周りに防鳥網を設置するなどの鳥害対策、また果実に袋をかけて鳥や蟻から守ることも必要になります。
  • 収穫は、果実が熟して木から落ちる直前が一番おいしいので、熟したものから順次摘み取ります。
  • 耐寒性は強い方ですが、東北から関東の山間部の地方以南以外では、防寒対策が必要になります。
  • 夏果専用品種で、6月下旬~7月中旬の梅雨時期の収穫になるため、雨対策が必要な地域もあります。
  • 夏果専用品種は、12月~2月に開心自然形で込み合った枝を間引きする程度ですが、キングは一文字整枝法にして強剪定をしても大丈夫です。

【水やり】について

イチジクの生産量第一位が、東ヨーロッパと西アジアにまたがるトルコで、次にエジプト、イランと続くので、乾燥した土壌に適しているように思われますが、それらの地域は、温暖ながら比較的降水量もあり肥沃な地帯なので、イチジクが乾燥に強いというわけでは決してありません。

逆に水は好む性質があるので、発芽期の3~4月、乾燥する7~8月には庭植えでも水遣りをすると枝が良く成長し、実が甘くなります。

特に日差しが強く乾燥しやすい夏場は、枯れることさえあるので、水はけのよすぎる土壌や、鉢での栽培では注意が必要です。
※ただし水はけが極端に悪い土壌では生育は著しく劣ります。

一文字整枝法の導入で収穫量アップ!兵庫県 夏果試験!

兵庫県でキングを含む夏果専用の7品種の栽培テストがおこなわれ、この品種以外の夏果は、着果が少ないうえに生理落下が多いため収量が少なく経済栽培はできない結果となりました。

ただ、キングに関しては、夏果専用種なので開心自然形でもそれなりの収量が上がり、一文字整枝はできないと思われていましたが、それが間違いで一文字整枝法の導入によって収穫アップが見込まれることが判明しました。

方法は、慣行の一文字整枝を基本とし、主枝上に結果枝と予備枝を交互に配置する方法で、これで、10a当たり約1.4t程度の収量が得られるそうです。

コツは整枝法、「桝井ドーフィン」の一文字整枝よりも新梢を片側だけで20~30cm間隔と密に配置し、新梢は冬の剪定時に、1本おきに短く切り戻し予備枝とする。

この予備枝が再来年度の結果枝となり、そして、切り戻ししなかった枝が来年度の結果枝になります。

整枝法に関する調査結果より、一文字整枝法を使うことにより儲かる「ザ・キング」が誕生することになりました。

【一文字整枝】

主枝となる2本の枝を「一文字」に伸ばした仕立て方!

  • 1年目は斜め45度にY字に伸ばし、十分に枝が硬化したら曲げたいところにノコギリで下半分を切り曲げれるようにして、水平に誘引する。
  • 水平に這わせた誘引線(またはパイプ)に成長に合わせてこまめに誘引する
  • メリットは、直線的に移動しながら作業ができる効率の良さ。
  • デメリットは、主枝は上面が凍害の被害を受けやすいため、とくに晩霜害の多発地帯では防寒措置が必須。

向いている品種

キング・桝井ドーフィン・ネグローネ・姫蓬莱・バナーネ、ブルンスウィック、カドタ、アーテナ
※ネグローネは、一文字整枝すると、収量は2.5倍以上になる。【吉岡国光園

不向きな品種

  • 夏果専用品種(ビオレドーフィン)
    ※夏果専用品種は、前年の枝に着果する為、剪定で切り落としてしまうため。
  • 樹勢が強い品種(ビオレソリエス、早生日本種、イスラエル、カリフォルニア・ブラック、ノルドランド等)
    ※樹の樹勢がおさまらないため。
  • 樹勢が弱すぎる品種(セレスト、ショートブリッジ、ブラウンターキー等)

【開心自然形】

開心自然形は若木のうちから主枝を3本決め、60度の角度になるように斜め上に枝を伸ばします。 樹高が高くなりにくく、管理しやすい樹形です。新梢が多く出るため、「新梢管理」による樹勢のコントロールが最も行いやすい樹形です。 結果枝も多いため、管理次第で多収につながります。

特に向いている品種

  • 夏果専用品種(コナドリア、サンペドロホワイト、ビオレ ドーフィン)
  • 樹勢が強い品種(ビオレソリエス、早生日本種、イスラエル、カリフォルニア・ブラック、ノルドランド等)
    ※ビオレソリエスは特に着果が難しく、ブドウの仕立てによく用いられる、主枝を4本伸ばす「四文字仕立て」まはた「X仕立て」という手法で育てられています。その手法により、1本の木から多くの実を収穫することが可能になっています。(佐渡島)
    また、根域制限、環状剥皮などおこなっている方もいらっしゃいます。
  • 樹勢が弱すぎる品種(セレスト、ショートブリッジ、ブラウンターキー等)

イチジク畑のキング